注目のブランドに迫るこのコーナー。今月の"it"ブランドは、㈱TSIグルーヴアンドスポーツの「パーリーゲイツ」です。今年でブランド30周年を迎えたブランドの施策や今後の取り組みについてインタビューしました。
| 「パーリーゲイツ(以下、PG)」とは?
岡田 1989年の立ち上がりから、今年で30周年を迎えました。「もっと気軽にもっと楽しくゴルフをしよう」をコンセプトに、年齢や性別などあらゆる枠組みを超えたゴルフウエアを提案してきました。百貨店を中心とする直営店をはじめ、EC・卸・アウトレットで展開しており、顧客を見ると、男性は45歳~55歳、女性は35歳~45歳の方を中心に支持されています。PGならではの鮮やかな発色、ファッショナブルかつ機能性を兼備したウエアやアクセサリーは人気で、契約する多くのプロゴルファーにも着用頂いています。
| 長年支持される理由とは?
岡田 自分たちがやりたいことを、しっかり表現できているからだと思います。昨今、ファストファッションの台頭により、消費者の低価格志向・売れ筋に対して、メーカー側がクイックに応える手法があります。ですが、PGはシーズンごとにテーマ性を持ち、そのやり方を一貫して変えていません。その打ち出すカッコ良さに対してお客様が賛同し、ついてきて下さっています。いわば自分たちは「洋服屋」です。そのビジネススタイルが当たり前であり、30年間やり続けられていることが信頼につながっているのだと思います。
酒井 「ゴルフ」と「ファッション」の二軸を両立させた、唯一無二のデザインは強みです。売上はもちろん意識していますが、単純に「次はこれが着たい!これがやりたい!」という気持ちを優先させています。その思いがPGらしさの表現につながっていると思います。僕は早い段階からやりたいことを企画するのですが、チームの反応やジャッジを大切にしながら進めています。切磋琢磨し、背中を押してくれる意見が自分の自信や力になっています。
| 30周年を迎えました
酒井 ブランドにとって大切な節目です。僕自身PGに10年間携わっていますが、その好機に期待されるうれしさとプレッシャーを同時に感じていました。取り組むべきことがたくさんある中で、30周年を機にブランドの質を高めたい思いが強く、まずはロゴを刷新しました。ブランドが基調とするネイビーを濃くし、文字を太くしました。以前よりもシックで強くなり、継承と進化がより表現できましたね。下げ札をはじめ、ショッパーやギフトボックスもリニューアルしました。持ち帰るまでの楽しさやプレゼントとして選ばれる価値など、お客様の思いにも丁寧に沿いたいと考えています。
岡田 店舗限定のイベントとして、12カ月連続のスタンプラリーとノベルティキャンペーンを実施しています。購入金額に応じた販促企画です。毎月ご来店頂くことで新作の訴求にもなりますし、店頭とお客様のコミュニケーションにもつながっています。新たな商品施策としては、2つのラインを1年間限定で展開します。
酒井 「キッズライン」は、PGとともに過ごしてきた方々のお子さん・お孫さんに向けての発信です。キッズプレーヤーではなく、家族お揃いで出かけて頂きたい想いを込めました。「プレミアムライン」は、本物の良さを熟知しているPGファンの期待に応えるべく、これまでにないクオリティで実現しました。
| 今後に向けて
酒井 31年目につなげる提案として、新ライン「PPG」を5月にローンチしました。ゴルフの練習をはじめ、さまざまなシーンでPGをより楽しんで頂くためのユースフルウエアです。初動も良く、来年の全店展開に向けては着用シーンの幅を広げていきます。やりたいことはまだまだあって、PGのフィルターを通したホテルも手掛けてみたいですね。ゴルフブランドにとどまらず、ラグジュアリーであり、憧れであり、さまざまな可能性を感じています。
そして目指すは、「ルイ・ヴィトン」のような存在です。たくさんの人に長く愛され、価格にとらわれず買いたいと思って頂けるよう、ブランドの価値をより高めていかなければなりません。その片側で、売場環境の改善やPRの強化など、未来を見据えた課題はたくさんあります。それに向けてはブランドに関わるメンバーが、それぞれのポジションでプロ意識を持つことです。世界で戦うことのできる強いブランド力を、PGは持っていると思います。
岡田 ゆるやかに保持していける売上をきちんと取りながら、今後の事業成長に向けてはブランドの価値を高めていくことが最優先です。いつでも、どこでも、どんな商品でも買うことができる立ち位置ではなく、人気があってこのときしか買えないという価値こそブランドとしての魅力があると思いま
す。好調の背景には、企画チームが楽しいことを考えてくれる裏側で、MDが抑えるべきものをしっかりと管理しています。ですが、この奏功に頼りすぎず常に新しいことを考え、危機感を持って取り組んでいかないと、伸長化する秀逸な他社ブランドにすぐに抜かれてし6まいます。
取り組むべきは「足りない美学」の追求です。妥協しないこだわり、ほかと一線を画す打ち出しを引き続き行ないながら、お客様にに喜びを感じて頂けるよう、商品・販促の両面での施策を強化したいと考えています。これまでの歴史やPGにしかできないパワーを強みに、31年目にも挑戦していきます。