注目のブランドに迫るこのコーナー。今月の"it"ブランドは、10月からTSIグループ入りした「株式会社上野商会」です。会社の成り立ちや事業展開、社風について11月28日付で新社長に就任した下地毅さんにインタビューしました。
| 「上野商会」とは?
当社は1955年に上野・アメ横で創業し、今年で64期目を迎えました。3つの事業を軸に展開しています。「卸売事業」では海外から買い付けたインポートブランドや自社企画・生産のライセンスブランドやオリジナルブランドの商品を全国に卸売販売しています。今後は現状のブランド認知を強化し、成長させていくことを考えています。セレクトショップを中心に店舗を運営する「小売事業」では、MD・バイヤーが中心となり、独自の目線で国内外の商品を仕入れ、それぞれコンセプトもターゲットも異なる9つのセレクトショップを展開しています。また、「アヴィレックス」や「ショット」は、メーカー機能を生かした「SPA事業」として独自の企画で製造を行ない、直営店での販売をメインに、卸売販売も行なっています。
ファストファッションやECの台頭など、アパレルを取り巻く環境が変化を重ねる中、当社はあくまでも「現場第一主義」の姿勢を徹底しています。接客をもってお客様の声に耳を傾け、お客様とデザイナーの距離を近くし、より良いモノ作りに発展させていく考えで体制を構築しています。
また、役職や部門を問わず、本社に在籍する社員は必ず毎月2回の販売応援を行なっています。店頭での接客を通じ、現場の空気感や今の時代を捉えていくことはとても大切です。もちろん私も出向きますし、接客に限らずスタッフの声を直接吸い上げるなど、コミュニケーションや相互理解を深める機会にもなっていますね。
| 新しさを見いだしていく力
男性服に関しては多岐に展開しているので、新たなテリトリーでの可能性も感じつつ、基本的にはほぼ網羅できていると思います。面白さにも匹敵しますが、それぞれのテリトリーの中で"最も良いモノを作っていこう、セレクトしていこう"という発想を起点に、お客様を裏切らず楽しんで頂きたい思いや姿勢を大切にしています。
その中で、新しい屋号の店舗を展開してきた大きな理由は、「新しいテイストの商品を扱いたい、売りたい」と願う社員がいたからです。当社のブランド群は派生で発足しています。社内では「惑星系」と例えていますが、大きい星もあれば小さい星もある、手を挙げる社員の意気込みを評価し、これまで投資をしてきました。うまくいけば少しずつ拡大していく、いわば原点は社員一人ひとりのチャレンジ精神なのです。
ご存じない方も多いと思いますが、「ビー・セカンド」は、インポートを取り入れたいというスタッフの声から、「ビーバー」のセカンドショップとして誕生しました。さらには同ブランドのスタッフがストリート系を狙いたいとし「エルエイチピー」を、デザイナーズに向けては「ロイヤルフラッシュ」を、そしてお客様の年齢に寄り沿い続けたいという思いから「ロウライフ」が発足しました。トップダウンは、これまで一つもありません。この精神が今日の社風として根づき、当社が誇る企業風土の一つになっています。
| 明るく元気に楽しみながら
ありがたいことに、辞める社員が少ないことも当社の特色です。自社のブランドや店舗に対するロイヤルティーが高く、定着率がとても高いのです。また同様にブランドが好きであるがゆえ、お客様が当社にエントリーされることも多々あります。
なので、みんなの思いが強い分、バランスがとれなくなった場合の修正リスクは高くもありますが、そのためにも常に現場とのコミュニケーションをとる機会を重ねています。
今後に向けて課題がないことはありません。先が見えない分、何をもって楽しく進めていくかを常に考えています。社内には年中、何ごとにも「コツコツ」と言い続けています。一日一日お客様に応える商売を重ねていくことが、必ず結果につながります。
そして、「明るく、楽しく、元気よく」の精神に尽きますね。ちなみに、社内の合言葉は「食べ物とお酒と在庫は残さない」。適量で新鮮なモノをお客様に届けていくことが使命だと思います。
TSIグループに入ることで、当社としてもステージが広がり、新しく動ける範囲が広がったと感じています。レディスのノウハウを培えること、逆に当社が持つメンズのコンテンツを紹介することで、新たなモノ作りや面白いコトに発展し、ひいてはグループ全体の基盤化につなげていきたいです。