注目のブランドに迫るこのコーナー。今月の"it"ブランドは、㈱上野商会の「ショット」です。1913年の創業から、ライダースジャケットを主力に長年支持され続けているブランド力についてインタビューしました。
| 「ショット(以下、SCH)」とは?
1913年、NYのイーストブロードウェイで、アーヴィン・ショットとジョン・ショットの兄弟によって、レインコート屋として創業したのがブランドの始まりです。1928年に世界で初めて、ジッパーで開閉するライダースジャケットを開発。ボタン仕様しかなかった当時、画期的なジャケットとして話題になりました。1950年代には、星型スタッズをエポレットに配した伝説のモデル・通称「ワンスター」が瞬く間に脚光を浴び、1960年代以降はバイカーのみならず、世界の名だたるロックミュージシャンたちから支持されました。
当社との出会いは1977年です。長谷川会長がラスベガスでのファッション展「マジック」などを訪れた際、SCHの商品を見て「面白い!」と直感し、NY本社へ商談に出向きます。そして日本における輸入・販売代理店契約を結び取引がスタートしました。日本人で初めて現地のファクトリーを訪れたのは長谷川会長だそうです。2009年には新たにライセンス契約を締結し、直営店舗展開がスタートしました。
| ブランドが持つ強み
レザーライダースの代名詞として、最高傑作モデルと語り継がれる「ワンスター」がブランドの基軸アイテムです。アイデンティティであり、SCHの人気を確固たるものにした、ある意味ブランドの財産でもあります。丈夫で柔らかなステアハイドを使用し、風合いのあるヴィンテージ感、ジッパーやアクセサリー使いなど、基本的なデザインは現在も変わっていません。そして、Made in USAにこだわっていることも大きな特徴です。自社ファクトリーでは、約80名の職人が裁断から縫製まですべての工程に携わっており、自国生産から離れたアメリカブランドが多い中で、創業期から守り続けているモノ作りの姿勢は強みだと思います。レザーブランドにおいても唯一無二の存在です。SCH本社はこの「ワンスター」のヒットによって、全米最大のアウターカンパニーへと成長していきました。
日本においてもSCH独自の匂い(個性)を生かし、他ブランドとの差別化を図ることで優位性が明確になります。当社のグローバルブランディングの核として、精度をさらに高めていければと思います。
| 認知度を高めるために
市場にモノがあふれ同質化が進む昨今、ブランドには付加価値が求められています。それを社会貢献として反映できないかとSCH本社と検討し、昨夏はポートレート写真集『ONESTAR in NYC』の出版に合わせて、チャリティープロジェクトを立ち上げました。国内外で活躍する5名のクリエイターが「ワンスター」に独自のカスタマイズを施し、その売上を「国境なき医師団日本」に寄付するものです。現時点で66万8,000円を寄付しました。少しずつですが、ブランドや企業活動を通じて社会に貢献し、その価値を向上させることは大切です。今後もさまざまなアーティストやブランドとのコラボレーションに取り組むことにより、まだ私たちが認識していない、ブランドのポテンシャルが見出せるのではないかと楽しみにしています。
また昨年の秋冬カタログから、イメージをよりモードかつファッションに切り替えました。クオリティやブランドイメージのアップ、スキルアップを図り、それらを店頭で表現すべく販売スタッフが楽しむことで、お客様の共感にもつなげていきたいと考えています。
| 今後に向けて
「レザーブランドと言えばSCH」「ライダースと言えばSCH」として称され、誰もが知るブランドにポジションを高めていくことが目標です。メンズ比率が9割と高いので、特に20代の方々に響かせることが課題です。そのための施策としては、20代~30代でほぼスタンスが決まるメンズの志向に対して商品開発を行ない、よりファッションシーンに振っていきます。USA製品は変わらないスタンダートなアイテムを、ライセンス製品はスタイリング・着やすさを重視した進化のあるニュースタンダードなアイテムを提供していきたいと考えています。その手法としては、外部デザイナーの協力を得たり、レディスラインも広げるなど、ブランドが持つ可能性の幅を広げていきたいですね。
そしてさらなる成長に向けては、企画から店頭までSCHに携わる一人ひとりが楽しむ姿勢で取り組んでいくことが大切です。その中で「追求力」を培い、あらゆることに制限なくチャレンジすることによって、おのずと結果もついてくると思います。