TSI BRAND INTERVIEW 「LE PHIL」
  • ル フィル
  • 2019.10.31
Fashion Capital

注目のブランドに迫るこのコーナー。今月の"it"ブランドは、㈱サンエー・インターナショナルが今春立ち上げた新ブランド「ル フィル」です。モノ作りの背景、1号店の進捗などについてインタビューしました。

― 大人の女性の日常に寄り添う服 ―

| 「ル フィル(以下、PH)」とは?
黒木
 ファッションビルに向けた新たな提案として、2019年春夏シーズンにデビューしました。こ事業の立ち上げに際しては二つの契機があり、一つは「アドーア(以下、ADR)」が培ってきた精度の高さです。百貨店を販路に支持されるADRのモノ作りはとても素晴らしく、それを追求するこだわりや背景を生かすことで、異なる販路においても共感頂けるのではないかと構想していました。もう一つは、団塊ジュニア世代である私が経験してきたファッションの趨勢です。セレクトショップの全盛期とともに、そのフィルターを通した感度の高いファッションを若い頃から楽しんできました。そして40代を迎えた今、本当に欲しい服はなんだろうと改めて感じました。大人の女性らしく素敵に見える服、それを提案できるブランドがあれば同世代から共感されるであろうというこの二つの仮説をもとに、スタートに至ります。ファッション市場が厳しい昨今、それに向けてはより新しい事業価値を提供しなければなりません。高品質・高感度でありコストパフォーマンスを兼備した日常着の提案を図っていきます。

| モノ作りへのこだわり
田中
 コンセプトである「クリーン・コンフォート・クチュールシップ」に従って、ADRで研鑽した技術や素材の価値を表現しています。その中で心掛けていることは、クチュール感やテクニックを落とし込みつつ、コンフォートかつクリーンさをPHの新たな強みにすることです。黒木さんと打ち合わせを密に重ね、ブランドの根幹を徹底的につめながらイメージ感を作り出すのですが、PHはトータルで世界観を表現できるところが優れています。また、仕立ての軽さには気をつけていますね。重厚で構築的に見せるADRに対し、PHはリラックス感や世代の価値観、館の特性など日常性が大切なので、裾の始末一つにしても変化をつけています。さらにマニッシュであることも、セレクト群が持つ価値観の一つだと思います。デザインの切り口や素材選び、テック要素もメンズならではの発想を加味したものです。それをあえてレディスに落とし込み、黒木さんが持つフェミニンなニュアンスと融合することで、新しい価値を表現しています。


| 強みとするアイテム
黒木
 当初のシグネチャーアイテムは、ADRから派生している意味合いからドレスとコートで設定しています。特にマニッシュ感や日常感を切り口にしたシャツドレスは、狙い通りとても好評です。コートはこれから実需期を迎えますが、すでに9月から手応えを感じています。また、当初の仮説と違ったことは、パンツの売れ行きです。春夏のカプセルコレクション時から大きく伸びています。田中さんが手掛けるパンツはシルエットが美しく、それゆえにお客様がその良さを店頭で感じ、試着して下さることは大きな強みだと思います。ブランドにとっても新しい可能性として、強めていきたいです。

野々山 中でもタイトシルエットで、フロントスリット入りのパンツは好調です。シルエットはもちろん、ストレッチの利いたはきやすさに加え、トップスとも相性が良い部分でヒットしました。SSシーズンからトップ品番になり、ECサイトでも早々に予約完売しました。インスタグラムの掲載から数多くのお問い合わせを頂くなど、この秋は素材を変えて継続展開しており、売上を大きくけん引しています。また、ニットも好調です。ロングシルエットが特に人気で、パンツ合わせもかなうデザインが好評です。手に取る方の反応は、素材の良さに対して手ごろな価格であること。軽衣料が大きく動いたことは、良い意味での想定外でしたね。


| 第1号店がオープン
野々山
 今春は都内3カ所でポップアップを開催しました。ブランド認知度が低くても気に入ったものがあれば購入される客層、インスタグラムの反響が大きい館など、立地の特性も大きく差が出ました。そういった意味では、今後の出店先も慎重に選んでいかなければなりません。
 そして9月8日、PHの1号店が「ニュウマン新宿」にオープンしました。3月のポップアップで検証ができた流れは大きく、とても好調なスタートが切れました。館とPHのターゲット層が合致していることも、追い風になっています。ポップアップは今後も主要エリアを軸に、引き続き行なっていく予定です。

黒木 店舗のコンセプト作りも、ブランドを表現する上では大切です。PHがイメージする女性像は、自然とともに暮らし、ミニマルで本質的なものを求める方。自然から与えてもらうリラックス感や体に優しいオーガニックの要素などを取り入れ、服と自然を同期化させることでシナジー効果を図っていきます。ベージュと赤をテーマカラーにした10月は、ザクロやパンパスグラスでディスプレイしました。大事なプレゼンテーションであり、打ち出す要素を通して、お客様とのコミュニケーションも楽しめる場にしていきたいと考えています。


| 今後に向けて
黒木
 私も着用するごとに、ますますPHが好きになっています。着心地の良さや本当の豊かさを感じて頂けるよう、あらゆるシーンに寄り添った服を提案していきたいと思っています。次のステージに向けては、大人の女性に向けたモードなテックを表現し、新しい価値を創造していきます。

田中 軽衣料をより進化させ、ブランド認知を高めていかなければなりません。また、日本のマーケットでは浸透していませんが、サスティナブルはブランドコンセプトにも体現すべく、今後に向けては必要な課題だと感じています。時代をとらえたモノ作りに取り組み、PHを通して表現していきたいです。

野々山 来春、1店舗の出店が決まりました。5年後には8店舗展開が目標です。その達成に向けてはADRから独立させ、単独事業として成長させることです。百貨店を主販路とする当社にとって、ファッションビルという販売チャネルへの進出は新たな挑戦です。やみくもに出店するのではなく、PHの世界観を表現できる場とチャンスを狙い、慎重かつスピーディーに取り組んでいきます。

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