~人工ロボットアームを「服」で支援~
株式会社TSIホールディングス(本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長:下地 毅)は、難病や重度の障がいなどで外出困難な方が自宅にいながら遠隔操作で接客を行う分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」の開発・提供を手掛ける株式会社オリィ研究所の所長で発明家の吉藤オリィ氏が開発を進めているロボットアームに装着する「服」を中心としたユニバーサルデザインウエア「MOVE WEAR」プロジェクトの記者発表を10月7日、本社役員会議室にて開催いたしました。
当社は、吉藤オリィ氏が長年の盟友であるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の武藤将胤氏のために開発したロボットアームに着用させる服を中心に、武藤氏がプロデュースし、11月24日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催される「MOVE FES 2024」に出演する際に着用するユニバーサルデザインの衣装を製作する「MOVE WEAR」プロジェクトを2024年3月よりスタートさせました。当社としては初のユニバーサルデザインであり、社内コンペで選ばれたスタッフたちがブランドを超えて、チームで社会課題に取り組む、初のプロジェクトでもあります。
当日は、社内コンペで選ばれた「ナノ・ユニバース」のデザイナー大澤凱心、縫製を担当した当社の修理工房「ReSew」の本多祐介も登壇し、「MOVE WEAR」を着用した武藤氏とともにユニバーサルデザインおよび機能性について説明いたしました。
「MOVE WEAR」は 袖や上半身と下半身での着脱可能のコート、ジャケット、パンツのマルチデザインで、それぞれ寝たままでも脱ぎ着できる機能性を持ち、なおかつ、タウンウエアとしても着用できるファッション性も兼ね備えた、「車椅子ごと着る服」という新たなスタイリングの提案です。
衣装に施したオリジナルプリントは今回の「MOVE FES 2024」のテーマの1つである「人体の拡張」に合わせ、有機と無機が交差するイメージへと発展させ、夜間視認性を向上させる再帰性反射の中でもオーロラ色の光を放つスペシャルな手法を採用。力強いプリントが持つエネルギーが衣服を通してエンパワーメントをより高め、既成概念にとらわれないファッショナブルなユニバーサルデザインを表現しています。このプリントは障がい者を危険から守る目的でもあります。さらにロボットアームに着用させる袖パーツにもリフレクタープリントを施し、腕を動かした時の視覚的インパクトを訴求しています。
「MOVE WEAR」を着用し、ロボットアームで手を振りながら登場した武藤氏は、視線入力装置を通して、「ファッションは、自分の個性を象徴する大切なアイコンです。日々、ALSとの闘病を続けていますが、どんな治療よりも気持ちを前向きにさせてくれるのがファッションです。このウェアはとても軽く、ストレッチが効いていて、長時間着ていても快適で着心地が良く、車椅子に座っていてもパンツが滑らない仕様になっているのは、とても便利でうれしい工夫です。このオーロラ色に輝くリフレクタープリントはステージ上でもライトに当たって華やかなものになると思うので、本番で着るのを今からワクワクしています。」と合成音声でメッセージを発信しました。
武藤氏がプロデュースする「MOVE FES 2024」に向けて、脳波でロボットアームを操作する研究開発を日々行っている、東京大学大学院 総合文化研究科 特任研究員で脳科学者の荻野幹人氏は、「ロボットアームを動かすだけでも脳に領域はできるが、そこに"服を着ている"という意識が加わり、服と融合しながら自分の腕と錯覚することで脳の領域が覚醒し、もっと広がる可能性があると思います。 "好きな服を着ている"、"おしゃれをしている"という視覚的、触覚的情報がポジティブな感情のループを生み、脳の回路を作っていく、脳の精度を上げていくという人体の拡張にも繋がるでしょう。ロボットアームと脳波を自然な形で人に繋げ、感じた結果が脳の領域を拡張するとか、変化させるということはこのプロジェクトでしかやっていないこと。世界的にも学術的にも新しいことをしているプロジェクトです。」と「MOVE WEAR」が脳に与える影響に期待を込めました。
吉藤オリィ氏はこのプロジェクトについて「私は自分の研究テーマである"孤独の解消"という研究の中でALSやSMA(脊髄性筋萎縮症)など難病の仲間たちとともに、自分らしさとは何か、他者から認識される自分の行動とは、社会参加とは何かということをテーマにしてきました。私は18年間365日欠かさず、自分でデザインした黒い"白衣"を着ています。「服」というのは自分そのものではありませんが、「服」に身体を通して動くことで、「服」も含めて"自分"であると私たちは自他ともに拡張して認識します。ALSなど重度障害を負ってしまうと身体をほとんど動かすことが出来なくなることもありますが、それが自分の思う自分らしい見た目、動きを含めたファッションを諦める理由になってはいけないと思っています。私たちもいずれ寝たきりになり、身体を動かすことが困難になりますが、たとえそうなったとしても、自分らしくあり続けたい、社会と繋がっていたい、その願いをファッションを通じて取り戻せるかもしれない。それが「MOVE WEAR」の概念です。今はまだ周辺機器と見なされる車椅子を、眼鏡のようにファッションアイテム化できるのか。そしてアイデンティティとして身体の一部とみなすことはできるのか。これらをテーマに据え、今後も武藤氏ともどもプロジェクトを進めていきたいと思います。」と思いを述べられました。
代表取締役社長の下地は「当社は吉藤オリィ氏が目指す"人類の孤独をリレーションテックで解決する"というミッションの達成に向けた活動に共感し、吉藤オリィさんと本プロジェクトをスタートさせました。慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授の南澤孝太氏や、東京大学大学院 総合文化研究科 特任研究員で脳科学者の荻野博士という学術界の方々のチーム参加によって、このプロジェクトがより社会性を帯びるとともに「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」という当社のパーパスにも通じるものがあり、"ファッションの力"で武藤氏を笑顔にし、この活動によって、その笑顔の輪をさまざまな障がいを持った方々に広げていく新規事業への第一歩を歩みだしました。デザイナー時代から長年、ユニバーサルデザインに取り組んでみたいという思いは持っていましたが、皆さまのお陰でやっと一歩を踏み出せたとうれしく思っています。ALSは年齢や性別に関係なく、誰でも発症する可能性がある難病です。身近にある大きな課題で、皆さんにもっと認知してもらう必要があるのではないかと痛感しています。今まで当たり前の服しか作ってきませんでしたので、ユニバーサルデザインは初めての取り組みです。ただ、次の時代を作っているという意識がありますし、そのための可能性を皆さんからいただいたと感じています。」と「MOVE WEAR」プロジェクトの意義について語りました。
この「MOVE WEAR」は11月24日のLINE CUBE SHIBUYAで開催される、最先端のテクノロジーと音楽が融合した日本最大のALS啓発音楽フェス「MOVE FES 2024」のステージで武藤氏が着用し、EYE VDJ MASAというアーティストネームでライブパフォーマンスを披露する予定です。
https://withals.zaiko.io/e/movefes2024
当社は今後も、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から「One TSI」として社会的および身体的に困窮している方たちが少しでも笑顔になる支援活動を続けてまいります。
※本件に関するプレスリリースはこちらから